東京都の男女平等参画推進拠点である東京ウィメンズプラザの新企画として2024年にスタートし好評を得た「トークカフェ」が、昨年に続き6月21日に開催されました。
第1回は「日常生活でモヤってる」をテーマに、「なんとなく生きづらい」「自分の気持ちがうまく言葉にできない」そんなモヤモヤを抱えた男女が集まり、今回の協力団体である「一般社団法人GENCOURAGE(ジェンカレッジ)」のメンバーと日常の悩みや違和感を共有し、問題の背景に隠れたジェンダーバイアスについて一緒に考えました。
今回のトークカフェでは、一般社団法人GENCOURAGE(ジェンカレッジ)が運営する「ジェンカレ」でジェンダー課題に関する学びを修了した6名の修了ゼミ生たちも加わり、各テーブルのファシリテーターとして参加者たちをサポートしました。
まずは代表理事の櫻井彩乃さんの自己紹介でスタート。櫻井さんは内閣府による男女共同参画推進連携会議有識者構成メンバーやこども未来戦略会議有識者構成メンバーなど幅広い活動に参加し、ジェンダー平等を実現するための活動を続けています。「今日のトークカフェでは、テーマとなっている日常生活で感じるモヤモヤを皆さんと共有し、どうすれば良いのかを一緒に考える時間にしたい」と話しました。
続いてファシリテーターとして参加者をサポートする、ジェンカレ修了ゼミ生の皆さんが自己紹介。高校生、大学生、社会人などさまざまな経歴を持ち、ジェンカレゼミ生として国内外の最新知識を身につけたメンバーです。「自分の家族の家事分担にモヤモヤを感じる」「映画の中でのジェンダーの描き方に関心がある」「ジェンダー視点による教育の必要性を感じている」「地方におけるジェンダー課題」「政治・経済分野におけるジェンダー問題」など、それぞれが取り組むジェンダー課題に、参加者たちも共感している様子です。
自己紹介を終えたファシリテーターがテーブルに加わり、プログラムがスタートです。
「はじめに皆さんの思っていることを聞かせてください。皆さんは男らしくとか女らしくと言われたことはありますか。誰にどんなことを言われましたか。書き込んでみてください」と、スマートフォンを使って質問を投げかける櫻井さん。スクリーンに表示された二次元コードをスマートフォンで読み取ると質問画面が表示され、回答を投稿すると画面に表示されます。
一般社団法人GENCOURAGE(ジェンカレッジ)代表理事の櫻井彩乃さん
写真左からジェンカレ修了ゼミ生の川口遥花さん、髙橋真愛美さん、武田真由子さん、山田麻央さん、小田波優矢さん、二ノ宮彩美さん
スマートフォンで質問に答える参加者の皆さん
「母親から、男らしくハキハキしなさいと言われた」「女の子は言葉遣いに気をつけなさいと言われた」「職場で男っぽいと言われた」「男勝りと言われた」「両親に早く結婚して、孫の顔が見たいと言われた」「男が美容に気を使うと珍しがられる」「女の子だから理系はやめなさいと言われた」などさまざまな意見が投稿され、櫻井さんは、「話をする前に皆さんとの共通認識を持っておきたいと思ってお聞きしています。性別やジェンダーに関する疑問やモヤモヤがあったら書き込んでください」と参加者の思いを引き出していきます。
「宗教における男女の服装の違い」「男性の方が賃金が高い現状」「女性にばかり育児を強制しすぎ」。次々に投稿される回答に櫻井さんは、「いろんな意見が出ましたが、今の社会の中で当たり前になってしまっているものが多くありませんか。今日はそうした当たり前になっていることに対して、一緒に考えてみたいと思います」と話し、性別の違いによって生まれている、政治や教育、健康面などにおける不当な格差を無くすためのジェンダーレンズという考え方を紹介し、「皆さん、ぜひこのメガネをかけて帰ってください」と伝えました。
回答画面に表示された参加者からの投稿を読み上げる櫻井さん
公平な社会を目指すジェンダーレンズの考え方を紹介しました
参加者の緊張がほぐれてくると、日本の社会の中に根づくさまざまな思い込みの現状を紹介しながら「ここからは皆さんと話をしていく時間にしたいと思います」と、グループで一緒に考える時間が設けられました。「学校や家、職場、地域、SNSメディアなど、身の回りで感じるモヤモヤや違和感を、テーブルに準備されたフセンに書き込んで、テーブルのみんなで共有してください」と櫻井さん。
テーブルの上がどんどんフセンで埋まり、日常生活の中にある参加者のモヤモヤの多さが伺えます。テーブルのみんなで共有したあとは、どんな意見が出ていたのかを全体で共有します。
男女の収入格差問題や父親の家事負担、男性向けの化粧品のことまで、様々な意見が出され、櫻井さんは「皆さんから出てきたモヤモヤの根本的な原因ってなんだと思いますか。次はその原因について皆さんで考えてみましょう」と、次のグループセッションのテーマを投げかけました。
櫻井さんは小学生よりも高校生の方が「男性だから」「女性だから」と思う傾向が強く、性別によって向いている仕事があると思う割合が高くなるという、東京都が令和5年度に行った実態調査のデータを紹介し、成長していくなかで女性だから、男性だからということが刷り込まれていくと話します。例えば男性が思う女性らしい職業の調査では、保育士、幼稚園の先生、看護師などが上位に入り、逆に女性に土木や建築、トラックドライバーについてたずねると、男性らしいという回答が多くなります。
ニュースでよく話題になるジェンダーギャップ指数の2025年の最新ランキングでは、日本は148カ国中118位。ジェンダー平等な社会になるためには100年以上かかる計算です。
モヤモヤをフセンに書き出す参加者の皆さん
「皆さんいろんな悩みを抱えてモヤモヤしていると思いますが、モヤモヤしているだけでなく、私たちも一人ひとり、何かアクションをしていくことが必要なんだと思います。そのためのきっかけにするために、いろいろ考えてみましょう」と櫻井さんが話し、テーブルでの意見交換がさらに盛りが上がっていく様子が伺えました。
それぞれのテーブルで、どんな意見が出ていたのかを発表する参加者の皆さん
「いろいろお話したいことがあって、今日の時間では足りなかったと思います」と櫻井さん。「ジェンダー平等の実現には、まだまだ時間がかかります。日常の中で一人ひとりが積み上げていくことが必要なので、参加者の皆さんにもお願いしたいことがあります」とジェンダー平等の実現に向けたアクションのポイントを紹介しました。
1つ目は自分のバイアスに気づくこと。違和感があったら、しっかりと自分で意識することが必要です。次に正しく知ること。何かの調査データを見て男女間で差があるような場合、なぜそうなっているのかを調べ正しく理解します。そして自分の意見を作ること。自分の意見を作ることは本当に大事なことだと話します。また、国や自治体、自分の所属している組織が、ジェンダーに対してどのような立場で何をやろうとしているのかを見てほしいと言います。そんな時に、つい批判が先に来てしまうことがありますが、批判するのではなく、良い取り組みだと思うことだったら、その良いという思いを届けて欲しいんです。
私たちジェンカレでも、国の基本計画策定に向け、皆さんの声を集めて国に届けるというキャンペーンに取り組んでいます。ぜひ私たちと一緒に、自分らしく生きられる社会を目指し、自分ができるところからちょっとずつで良いので、今日話したことを皆さんの周りにも広げてほしいと話し締めくくりました。
最後には、東京ウィメンズプラザの図書室で借りることができる、おすすめ本を紹介
「モヤモヤして悩んでいる時に読むと元気になれます」
プログラムの終了後には、まだ話し足りないという参加者との個別相談が行われました。
そのままテーブルに残り、ファシリテーターと話し込む参加者の姿や参加者同士で親交を深めている様子が見られ、初めて会った者同士にも関わらず、会場内に一体感が生まれていたことが印象的でした。
終了後のアンケートでは、ファシリテーターのアドバイスが「参考になった」「やや参考になった」のいずれかを回答。また今後の生活に「活かせそう」と全員が回答し、参加者の満足度がとても高かったことがうかがえます。「プレッシャーがなく、ゆっくり、じっくり話すことができた」「想像以上に話しやすかった」「視野が広がった」などの回答も見られ、リラックスした時間を過ごせていた様子も伺えました。
今回は高校生の参加もあり、幅広い年代が興味を持つテーマであり、世代を超えてさまざまな意見を聞くことができた回となり、最後に参加者の皆さんと記念撮影をして第1回トークカフェを終了しました。
参加者の皆さん、ご参加、ありがとうございました。
東京ウィメンズプラザトークカフェ事務局
〒105-0013 東京都港区浜松町1-8-6 FK ビル2F
TEL:03-5422-1146 (平日10 時00分~ 17 時00分)
E-mail: twp-talkcafe2025@ohwada-gumi.co.jp
※本事業の事務局は、東京都から株式会社おおわだぐみに運営を委託しております。
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